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尚美学園大学 総合政策学部 ライフマネジメント学科 スポーツコース 江頭ゼミ

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2017.7.24

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この仕事をやっていて、よかったと思うこと

 子供が変化するタイミングが凄く好きですね。うちは結構F1関係の仕事が多くて、カートドライバーで今中学三年生の、全日本チャンピオンになりそうな子が今年いる。その子は、最初小3くらいに預かったとき、性格にちょっと問題があると思いました。そうすると、ファンを獲得出来ないんですよ。そういうとプロっぽく聞こえますけど、もう少しアマチュアっぽくいえば、応援してくれる人を減らすということ。応援が少なくても、選手には影響がないようですが、実はパフォーマンスに凄く影響します。自分のことを直接知らない人が、どう思っているか。自分の家族や、友達に応援してもらったときには、凄いpowerを出す。でもそれが逆の効果を出すようになると、選手の環境は凄く悪くなる。勝っても頑張っても、喜んでもらえなくなります。だから、それを変えていかないと、選手が本当の力を出すことはできなくなってしまう。その当時、彼は速いけど性格悪いねっていう状態だったんです。親御さんも、勝たせたいという思いが強いけど、あまり人間教育的なとこに、力入れてやってるような感じではありませんでした。具体的に、人間性を高める教育をしたわけではありません。ですが日々の練習の中で、価値観や規範を示した話をしていました。最近の優勝インタビューでは、人への感謝とか相手に敬意を表せるようになりました。また、自分が勝っても負けても、相手のことをちゃんと評価して、尊敬して話をできるようになった。その事例は、仕事をしていて一番良かったなぁと思いました。

子どもにスポーツを教える過程で気を付けていること

cozy05.jpgうちには今、下は二歳から上はプロまでいますが、当然、「楽しい」ことを捨ててでも頑張らせなければ、いけないときが出てきます。小学校低学年なのにイヤイヤ言いながら練習している子も中にはいます。しかし、その時期を乗り越えたから今ジュニアの中でトップにいるという子もいるわけです。例えば、中学校の段階でトップに立たなければ18歳のトップはない、と考えるスポーツもあります。子どもによって、そのスポーツの価値や、どういう思いでそのスポーツをやっているのか、というところをまずは僕らが分析することが一番重要な仕事になってきます。今は、子どもがスポーツをやっていく中で「自分がどうしたい」という問いに対して、親と子どもがそういう話をしていくことが多いですが、情報量が少ないですよね。それを早い段階で、いつのタイミングでこういう選択をしなくてはいけない、と。この子の競技能力はこんな状態だから、こんな道にいくことも考える必要がある、と。そういうことをコーディネートすることが、自分の中で一番大きな仕事になっていくのだと思います。

 また、スポーツを嫌いになるにしても、「もうやだ」と音を上げるには必ず布石があります。それを僕たちが、今日のあの子はどうだったか、今日はこういう表情・メンタルをしているんだな、この前のサッカースクールはどうだったのか、ということを把握しなければいけません。そのためには、子どもとの対話をしっかりして、今子どもがどういう精神状態なのかという分析を細かくすることが重要です。

 僕らは競技のコーチではありません。例えば、小学校低学年生でどこかのサッカースクールに通っていて、フィジカルやメンタルをこちらで見ている、というケースがよくあります。そうなると、こちらでサッカーのコーチングに関してどうこう言うことが難しいです。頑張るというのは良いことですが、頑張りすぎると限界がどんどん近づきます。頑張って伸びる方向は上にですが、一歩間違えたら下に折れてしまう。そこを上手くコントロールして、パフォーマンスを落とすようなことをしてはいけない、というのが僕らの指導のベースにあります。子どもやスポーツ選手にとって、フィジカルや技術よりもメンタルが一番大切だと考えています。選手のモチベーションやメンタルを下降させないように、指導時のコミュニケーションでも注意をしています。同様に、アスリート自身もモチベーションやメンタルを大切にするよう、自己管理できるように指導しています。

アスリートや選手以外にも美容目的の女性に教えている理由

cozy03.jpg ひとつは、競技スポーツと生涯スポーツ、あるいは健康とかアクティビティーとか趣味の分野と競技スポーツの間に、太い壁があるんですよ。日本は。でも、ヨーロッパとかアメリカを見ると、競技スポーツと趣味との壁が薄いんです。僕が目指しているのは、総合型のスポーツ。COZYの中に、トップアスリートもいれば子供もいる、愛好家がいる、健康やキャンプ、アクティビティーをやりたい人もいる。それは趣味の領域ですよね。結局僕がスポーツにおいて大事なことは、なにか垣根を越えた交流ができるってことですね。トップ選手たちを、僕らが間に入ってあげることによって、もっと応援してくれる人達を増やしたい。逆のパターンは、趣味でゴルフやってる人がいます。その人達に、うちのサポートしている選手が、時々一緒にラウンドしたり、教えてあげたり。そういう交流活動を、もっともっと活性化していきたいというのがあります。入り口は色々あると思うんです。例えば、美容目的のトレーニングがあってもいいのかなあと。僕たちは体を動かすとか運動系の会社ですから、運動を皆にしてもらいたいという思いが当然あります。運動ってどちらかというと、体内からの美容じゃないですか。でも、美容に興味がある人達には、そういうプログラムを提供してあげることによって、その中で外側を綺麗にするには、内側も重要ですよっていうのを説いてあげる。そこから、運動に対して参加してもらえるような導き方をするとか。そういうようなことをしていますね。

 これも子供たちの競技選択と一緒で、目の前にあった競技が野球だったから野球をやったっていうのもいいんでしょうけど、これからは色々なものを体験してみて、この競技を選んだっていうものが良いと考えています。それは大人たちの趣味でも一緒で、ゴルフを365日中300日やってます、という人もいるかもしれないけど、そうじゃなくて。ゴルフやったことないけど、ちょっとやってみたいとか。ゴルフやって腰が痛くなっちゃたから、ヨガが体にいいって言われたんだけどできるかなぁとか。そういうような問い合わせとかもあります。だから、そういうものを定期的に提案できるような、総合型の会社になりたいという思いがあります。今、COZYが中心に行っているパーソナルトレーニングは高額ですから、そればっかりやっていて社会の役に立っているのか。だとしたら、グループ的にできる2000円とか3000円とかでレッスンできるようなものを、もっと開発して提供しようと思ってやっているのが、ホームページにもあった“クラブコージー”という美容やフィットネス系のレッスンを行っています。ああいうものに通じて普段会うことがなかった人達が、交流してもらってそこで人のネットワークが広がったらいいなぁっていうのも目的のひとつです。

挫折を味わった経験

挫折は毎日というか日々あります。
楽しむ事と、失敗しないことは違います。挫折も失敗もしなかったら、楽しくないかもしれない。向いてないと思うこともあります。僕は、元々職人っぽいんです。トレーナーの理論、知識、技術などが凄く好きで、本当はそういう世界でやっていきたかった。でも、今実際にやっていることは、コーディネートが中心です。僕がやりたかった仕事は、基本的にうちのスタッフがやっています。そうなったのは、僕には僕のトレーニングの理論や、メンタルの理論がある。同じ目的に向かうにしても、人それぞれにアプローチが違います。しかし、僕のやり方が全てのアスリートに受け入れられるわけではない。身体を作り直すにしても、柔軟性を高めるアプローチと、まず体重を落として絞るアプローチと、他にも沢山のアプローチがあります。アスリートは、自分の身体ですから、たまたま出会ったトレーナーのアプローチに合わないケースもあります。そこでミスマッチが起こると、それは悲劇です。中学生の時に相性の良かったトレーナーでも、大学生になったらミスマッチが起きているケースもあります。でも、トレーナーとのコミュニケーションが確立しているので、アスリートはミスマッチに気がつきません。これも良い結果を生まなくなります。だとしたら、僕がコーディネート的な立場で、選手の言葉をしっかりと聞いて、それに見合うトレーナーを会社の中から育てて組ませていこうというふうになりました。そこの部分は葛藤でしたね。今は答えがスッキリしていますけど、トレーナーっていうのはなんて役にたたないんだと思いました。

 あとは、アメリカで仕事をしていた時に、トレーナーの仕事が形になっていて、スポーツの世界として役割があると思いました。でも、日本に戻るとトレーナーの存在は知られているけど、まだまだ普及されていないのが現実でした。それを変えていくのは、トレーナーをしていたら無理だと思ったんです。だから仕事で自分の役割を、アスリートや競技を中心に、もう少し仕事を幅広く構築していくという方法を選択しました。今、“ウェルネスコージーゴルフアカデミー”といって、通信性の高等学校とうちとが連携して、一般社会法人の別の法人を作ってやっています。ここに集まってる子は、日本の中ではかなりトップのレベルで、将来有望な人材です。その子供達の、生活や練習から、彼らの将来のマネジメントまでやっていく形態を作っています。そういうようなベースを作ってあげないと、トレーナー人はなかなか生きるところがないというのが今の現状ですね。ですから、若い時は、トレーナーという道をどうやって開拓していったらいいのかなぁというのは凄く考えました。

カナダ留学の経緯

 20歳のときにカナダに渡り、自分で営業をしていました。コミュニティセンターなどで自分がつくったチラシを配り、自分でお客さんを集めました。広告・宣伝をするうちに段々とお客さんが増えてきました。お客さんは現地の日本人だけでなくカナディアンも多くいました。そのうちに、その中のお客さんがカイロプラティックのドクターに僕を紹介してくれました。そして、そこで週に3回ほどトレーニングをすることになりました。当時、向こうではガンガントレーニングをすることが主流でした。でも、僕のやっていたトレーニグでは、インナーマッスルやストレッチを重視していました。そのあたりを中心にトレーニングを教えていたところ、カイロのオフィスで患者さんに、カイロだけでなくエクササイズなどのトレーニングをやってくれと言われました。それで、僕は急成長できたのだと思います。

 その後、そこの人に雇ってもらいました。カイロはだいたい5分ほどで終わるので、それが終わった後にトレーニングルームをひとつつくってもらってトレーニングやストレッチを30分ほど行いました。そうこうするうちに、自分の活動を地元バンクーバーの日系新聞が取り上げてくれました。それを見たシアトルマリナーズのスカウトマンから「一緒に仕事をしないか」というコンタクトがありました。目の前にいるお客さんに必死でトレーニングをし続けただけでした。紹介が紹介を呼んで、多くの人に評価していただけたのは、運も大きかったと思います。そのとき東京の恵比寿で新しくジムがオープンすることを知りました。芸能人やトップアスリートしかこないような勧誘制のマンツーマンのジムです。結局、僕はそちらを選び、23歳のときに日本に帰ってきて仕事を始めました。

現在に至るまで

 僕は社会に出てからトレーナーをやってきましたが、それを志したのは中学2年生のときでした。この頃は、スポーツ関連、アスリートに関わる仕事に就くために何をしたらいいかをずっと考えていましたね。僕は、学生時代は競技者として野球を続けていました。スポーツはナンバーワンになるためにやるものではないのだというのが、今の常識ですよね。しかし僕は違いました。ナンバーワンになるためにやるもの、それがスポーツでした。もしかしたら、野球の世界ではその傾向が強いのかもしれませんね。「勝つ」とか、「頂点に立つ」とか。甲子園が大きなものになってしまっていたので、競技者を引退する決意をし、切り替えました。

 自分の姉が中学生の頃にNYにダンス留学をしていたこともあり、勉強するなら海外だなと思っていました。それこそ自分は中学生の頃には、高校は海外に行こうと思っていて、高校卒業してアメリカに行くつもりでした。しかし、その時に「もうちょっと日本で勉強することがあるんじゃないの」と言われました。あるいは「トレーナーに関しても、日本での知識がないままに海外に進出して海外だけの専門知識が入っても、それを日本語に置き換えられないから日本に戻って仕事ができることが重要」だとも言われました。「じゃあ大学か」と思いましたが、自分は時間を買おうと思い、短い時間で多くの情報を得ることができるのは専門学校だという結論に行き着いたのです。

 日本の専門学校を2年間、それを終えて半年くらいですかね。『グローバルスポーツ』というオリンピック関係のサポートをしている会社に一時就職しました。そのときも本当はカナダで語学を勉強して、そのあとにアメリカに行こうと思っていました。このような感じで、頑張っていたというよりは、トレーナーになるための道を模索していたんです。
 これは今も変わりませんが、自分の好きなことを仕事にしたり、自分のやりたいことをやるのなら、世間が作っている王道をやるくらいなら「別に自分じゃなくてもいいじゃん」という思いです。僕の考え方は、クライアントのため、人のために何ができるのか。自分がしたい仕事に就くのではなく、本当に力を貸してほしい人のために何ができるのかと。そうすると結局、どうやってオンリーワンになるのかを常に考えて、どうやってトレーナーの道をつくっていくかを考えていたのかもしれません。

学生にむけて

 トレーナーになりたいのなら、資格を取っておくことが一番安全だと思います。一方で世界を視野にいれることも大切です。それは普段見ることのできないものや出会わない人と出会えることが重要だと思うからです。英語を理解していないで、日本語だけで得ることのできる情報は、全世界の1パーセントしかないのです。思考の範囲を広げておくことです。自分の知ってる、地域が狭く価値感も単一だと発想も拡がりません。地域を広げることが、海外の捉え方としているだけで、あまりグローバル化という意識はないですけどね。僕が言うことは極端だと思うので、あまり参考にはならないかもしれませんが・・・

「大変なこと」も多いですが、「楽しいこと」ばかりだと思うんですよ。「大変なこと」をどう捉えていくかじゃないですか。「楽しいこと」を得るためには「大変なこと」も当然あります。しかし、「大変なこと」を一工夫すれば楽しくなったりもするし、新しいものが見えて来ることもあります。もっと「楽しいこと」が見えてくると思います。

 物事に対する答えを探さないことかもしれませんね。うちのトレーナースタッフの子達には言うんですけど、皆答えを探そうとするなって。僕でさえ今答えはない。トレーニングにおいても、このメニューを続ければ、こう変化する、といった答えが用意されていません。日々進歩するには仮設じゃないですか。知識や経験から、このメニューをやれば、足が速くなる、という仮説を立てる。そのメニューを実施している間に、アスリートの細かな変化を察知して、メニューをかえてゆく。仮説と検証の繰り返しだと思います。答えを探すから苦しくなるんですよね。だから焦らずに、一日ひとつ学ぶこととか、経験することとか、そういったものを積み重ねていったら、すごく楽しい人生になる気がします。仕事は人生の一部ですから、僕は仕事に懸けてやっていますが別にそうではなくてもいいと思うんですよ。趣味のために平日頑張って仕事するのもいいじゃないですか。だから、自分の理想を決めるのではなくて、探していくことを楽しむことが大切だと思っています。

<取材・編集/ 武内雪恵、紺野仁美、反町祐梨>