尚美学園大学 総合政策学部 ライフマネジメント学科 スポーツコース 江頭ゼミ

2019.11.01

東京ヴェルディで主にどのような仕事をしているのか教えてください。

名刺にあるとおりにパートナー営業部という部署に所属をしています。パートナー営業部は、二つのグループに分かれています。一つ目は企業を相手にする仕事、スポンサーを取る仕事です。二つ目はホームタウングループというもので、主に行政や地元の教育機関などに向き合う担当です。具体的には、いかに東京ヴェルディのファンを作るか、いかに地域の方に東京ヴェルディを知っていただくかという活動をするグループです。私はスポンサーセールスを行う部署にいます。その中でも主に新規開拓を担当しています。他にも「ヴェルディカレッジ」という学生向けのスポーツを現場にしたビジネススクールの立ち上げ、アスリートのデュアルキャリア支援や女性アスリートの社会進出、企業とのコラボレーションなどを現在企画して進めつつ、実際の試合の運営なども行っています。
 

大手であるリクルートからヴェルディにした理由

大手であるリクルートからヴェルディにした理由リクルートに入った理由が、サッカーの世界に入るにあたって営業力を自分の武器にしたいという考えがあったこと。そして選手のキャリアを支援する為のノウハウを構築したいという2つの思いがあったからです。 

そもそもリクルートも新卒で入った会社ではなく、今のヴェルディで4社目です。私も皆さんと同じように、大学生の時にスポーツ関係の仕事がどうしてもしたいと思い就職活動をしていました。そしてご縁があり、某チームのホームページを作っているIT系の会社に就職することが決まっていました。しかし当時は2009年でリーマンショックが起こり、大学卒業後、入社3日前に電話があり、それは「会社が潰れるかもしれないから少し待っていてほしい」という連絡でした。5月に入り、ようやく連絡が来て入社出来たのですが、研修も何もないまま、代理店として扱う商材のポータルサイトに「飲食店を載せませんか」という売り込みの電話を1日約200件行う営業を行いました。何を売るかもよく分からないまま、罵倒もたくさんされ、それでも1人で200件かけ続けました。上司に7月に呼び出され、業績悪化により給与が支給できないと伝えられ、新卒全員が解雇されました。これが私の社会人としての1社目です。
その後転職活動をして、またご縁があり、神戸のIT会社で営業として働くことが出来ました。しかしスポーツの仕事への想いが強くあった為、本業で出来ないのであれば複業でやろうと思いつきました。そこで大学時代のコミュニティをNPO化して複業としてスポーツの仕事を始め、18時で本業の仕事を行い、そこから終電までNPOの仕事をするという流れでした。そこでは女性向けのサッカー教室やランニング教室の開催や、アスリートの社会貢献活動の企画運営、カンボジアでのサッカー大会の企画運営などを3年半くらい行っていました。
しかしそれでも、やはりスポーツの仕事を本業でやりたいと思い、自分で履歴書を胸に忍ばせ、複数のJリーグチーム職員が集まる場所に売り込みに行きました。そこで共通して言われたのは、「何が出来るの?」という問いかけでした。営業を約3年やってきましたが、自分独自のスタイルや武器がないことに気付きました。改めて自分は何がしたいのかを見つめ直した時に、選手の引退後のキャリア支援などに興味があった為、人のキャリアを作る仕事で1番大きな、圧倒的な営業力をつけることが出来る会社を探しました。そこで真っ先に思いついたのが最初に出てきたリクルートです。リクルートの面接では、サッカーの力で社会を変えたいと本気で思っていることを熱く伝え、その日のうちに内定を頂きました。リクルートでは人材紹介の部署におり、主に中途採用支援の担当営業でした。途中で希望をして新卒採用支援の部署に異動し、主にリクナビのプロモーションや学生のキャリア支援などを行っていました。リクルートで5年ほど働いたところ、既にヴェルディで働いていた友人が、「ヴェルディに来ないか?」と誘ってくれ、目指していた夢を掴むチャンスだと考え、転職を決めました。元々NPOを一緒にやっていたメンバーで、私がJリーグチームで働きたいと言っていたのを覚えていてくれて、今その彼と一緒に働いています。
 

仕事をする上で大切にしていること

1番に考えているのは、お金を出して頂いている企業にとって何が実現出来たらその企業が幸せになれるのかということです。私が務めていたリクルートは、『圧倒的当事者意識』という言葉や、『社会起点』『昨日を越える』という言葉を大事にしているのですが、私にもそのDNAが流れていると思っています。なので、例えばユニフォームのスポンサーセールスの場合、既存の概念から壊してやろうと思っています。例えば、ユニフォームに●●万円で企業名を掲出しませんか?というカタログ的な営業は違うと思っていて。お客さんである従業員の方が一生懸命働いたお金を、社名を出して終わりってすごく勿体無いと思わないですか?企業が抱えている事業課題、また5年後10年後にどこを目指そうとしているのか。それらに対して、「サッカーを課題解決の手段にして、ビジネスとして有効活用しましょう」という提案をするようにしています。企業に深くまで踏み込み、うちを使ってどのように事業発展させていけるのかを大事にする文化を、今ヴェルディの中で作っていこうとしているところです。ヴェルディをどう発展させるかということはもちろんですが、そうではなく、お客さん以上にお客さんの立場になるという『当事者意識』を持ち、共に成長していくという視点を持つことは、大切にしている事の1つです。
そして、このような考え方が他チームやスポーツの域を超えてもいいと思っています。最終的にはスポーツ業界全体が、企業や観客に価値を返していけるような考えが普及していけばいいなと思います。その為に自分たちがまずはパイオニアとして、どこもやっていないような取り組みを実施し、業界を変えていくことで社会を変えられるのではないかと、長い目で見て仕事をしています。文化を自分発信で作っていきたい気持ちがあるので。
 

佐川さんのことを調べさせていただいたときにヴェルディの採用に関わるような任務にも携わっていきたいということを知ったのですが、どのような人材を採用しますか。

採用する上で大切にしていることは、「スポーツが好き」ということだけでない人であるということです。もちろん好きであっては欲しいのですが、入社して何を実現したいのか、やりたいことを明確に持っているのか、という点を重視して人を見ています。リクルートのように『なんで』と『自分はどうしたいのか』というところを深掘りして、その人の根っこを見るようにしています。。ですので、繰り返しにはなりますが、入社して何を実現したいのかを持っているかどうかというところを重視しました。
 

学生のうちにやっておいた方がいいことはありますか。

失敗を恐れずに色んなことにチャレンジして欲しいと思います。正直、どんな失敗をしても許されると思うんですよ。私は学生時代にヴィッセルカレッジの中でイベントをやっていたのですが、ヴィッセルの社員さんや年配のボランティアスタッフ達と一緒に、試合運営をしていてすごく怒られたことがありました。そういう社会人に怒られた場面や、意見をぶつけた経験は今でもすごく鮮明に覚えていたりもするんですね。そのおかげで今、営業を10年間くらいやっていて、初対面の社長とかでも臆せずに話せる基礎能力が、学生のうちに身についたと思います。そういうチャレンジをし続けたことが、日々の社会人生活の中で今でも武器になっていると感じています。普段の学生時代に接するコミュニティだけではなく、違う大学の人や、社会人の方のような普段のコミュニティとは違う人と接点を持っていれば、それは将来的な価値に繋がってくると私は今になって感じています。

あとは先ほど失敗を恐れずにチャレンジして欲しいと言いましたが、何か一つやりきった経験も価値になると思っています。私はヴィッセルカレッジを2年間続けて、カンボジアやインドネシアでサッカー大会など新しい事にチャレンジしました。このような経験をしてみて1つ1つの思い出としてすごく楽しかったですし、人生を変える良い経験になりました。でもそんな事、やらなくてもいいじゃないですか。学校に行けばいいだけなのに、わざわざもう1つの学校に行き、スポーツの現場で勉強するという「自分にプレッシャーをかけること」を2年本気でやりきった経験というのが、私の中で本当に価値になって残ると思います。自分がやると決めたことをやりきる経験、そこから得る成功体験というのは自信にも繋がって来ます。そういう体験を是非してほしいと思います。

私が良かったと思うことは、ヴィッセルカレッジに入るまでの20年間は、いわゆる決められたルートで生きてきました。高校受験があり、大学受験があり、大学の授業もあるものから選んでいくという生活を送ってきたのですが、その+αとしてのヴィッセルカレッジに行こうと自分で意思決定したことは、人生で初めて自分で考えて一歩踏み出した瞬間でした。自分の意志決定で一歩踏み出すという経験が、生きてくるなとすごく思ったんです。色々な事にチャレンジ出来る学生時代に、是非そういった経験をしてほしいと思います。

 

 

<取材・編集/坂本 楽々、野田 真央、速石 千里>